はじめに
8月10日におよそ20円だったトルコリラ/円は下落を続け、
8月14日現在15~16円付近で揉み合っています。
上昇の兆しが見えないトルコリラ。
安止まりの原因は何なのか?トルコ安傾向はいつまで続くのか?
直近の方向性について、検討してみました。

脱・通貨安に必要な要素
以前のエントリーでも書きましたが、通貨の価値を担保するのは、その国の信頼性です。
高スワップという魅力のある通貨であるにもかかわらず、トルコリラがその価値を落としているのは、
これほどの高金利であっても、通貨の信頼性を考えると、トルコリラは「高すぎる」と判断されているということです。
それでは、高金利を覆すほどの懸念材料とは一体何なのかを見ていきましょう。
大統領への過度な権力集中
一つ目の懸念材料は、大統領に権力が集中しすぎていることです。
2018年6月24日の大統領選挙で、エルドアン大統領が再選を果たしました。
もともとエルドアン大統領は、独裁的な指導者として有名でしたが、
この再選により、自身の権力基盤と独裁体制をさらに強固なものにしました。
通常、独裁体制が敷かれている国からは、外国資本が引き上げていきます。
大統領命令によって、超法規的な措置が行われる可能性のある国では、まともにビジネスなど行えないからです。
「もはや民主主義ではない」と言われるほどのトルコの政治状況を見て、
外国資本の逃避を嫌った投機筋が、トルコから資金を引き上げていったのです。
米トランプ政権との関係悪化
2016年10月に起こったトルコでのクーデター未遂事件。
トルコ当局は、このクーデターに、トルコ在住の米国人牧師が関わったとし、現在牧師を自宅軟禁下に置いています。
一方、米国側は、牧師がクーデターに関わった証拠がないとし、即時解放を求めています。
トランプ大統領は、Twitterでトルコに対して「大規模な制裁をかける」と宣戦布告。
実際に、2018年8月10日、トルコからの輸入品にかける関税をアップさせることを発表しました。
トルコ側も一歩も退かず、米閣僚に制裁を科すことを発表。
両国間の対立はエスカレートするばかりで関係改善の兆しが見えません。
トルコ中銀の独立性を疑問視
こうした通貨安の状況では、更なる利上げに踏み切り、外国からの資金を呼び戻すしかありません。
利上げの決定を下せるのは、トルコ中央銀行(日本で言う日銀)ですが、
トルコ中銀も実質的にエルドアン政権の支配下にあり、金融政策にも政権が介入してくる状況です。
エルドアン大統領は、インフレを避けるには利下げのみが効く、とセオリーとは反対のことを言っており、
このせいで、トルコ中銀も利上げに踏み切れないようです。
つまり、
・エルドアン政権 ➡︎ 利下げしたい
・トルコ中央銀行 ➡︎ 利上げしたい
という図式が成り立っており、力関係的にエルドアン政権の方が優位であるため、
追加での利上げができない状況なのです。
通貨安はいつまで続く?
通貨安は、エルドアン政権の政権運営に端を発するものが多いです。
エルドアン大統領は先ほど書いた通り、今年の6月に再選したばかり。
しばらくは強大な権力を保ち続けると見られています。
今後しばらくは続く可能性がある
トルコ中銀が、政策金利の引き上げを連続して失敗していることもあり、
しばらくは通貨安脱出のためのポジティブな材料は乏しいでしょう。
今後も売りの傾向は続き、下落傾向は変わらない可能性が高いです。
※この記事を書いている8月15日深夜現在、トルコリラ円は若干反発し、
17円を挟む形で揉み合っています。
後述の、米国との関係改善、利上げ関係のニュースには注目しておきましょう。
米国との関係改善への期待
米国との関係改善が行われれば、上昇トレンドに乗る可能性があります。
トルコリラが、ここ数年ずっと下落傾向だったのにはさまざまな理由がありますが、
ここ2ヶ月ほどの大幅下落の直接的な原因は、あくまでエルドアン政権と米トランプ政権との対立です。
米国人牧師の釈放など、エルドアン政権が宥和に踏み切れば、トランプ政権も制裁を解除する公算が高く、トルコリラは安定します。
こうした交渉は、水面下で行われる可能性が高いですが、為替の小幅な上昇などで兆候が読み取れる場合もあります。
しかし、以下の記事でも書いた通り、我々がエントリーすべきなのは、
「確実に上昇トレンドに乗ったと判断できるタイミング」です。
冷静に、機が熟するのを待ちましょう。
さらなる利上げに踏み切れば通貨安脱出も
また、トルコ中銀が追加利上げに成功すれば、アメリカとの関係改善に次ぐ効果が得られるでしょう。
もちろん単純な利上げは対処療法的ではあるのですが、投資家が重視するのはリスクとリターンのバランスです。
リスクを補ってあまりあるほどのリターンが得られると多くの投資家が判断すれば、トルコリラは上昇トレンドに向かうでしょう。
アルゼンチンはトルコの通貨危機を受けて、政策金利を40%から45%に上げています。
さすがにここまでの利上げは無理でしょうが、方向性として利上げの意思を示すだけでも、十分な効果があります。
まとめ
・歴史的なトルコリラ安の原因は、
「独裁政権✖︎米国との関係悪化✖︎トルコ中銀の利上げ足踏み」によって起きている
・通貨安を脱出できる可能性があるのは、⑴米国との関係改善、⑵利上げ
・一時的な反発があっても焦ってエントリーせず、ニュースをウォッチし、
ファンダメンタルに裏打ちされたトレンド変化か吟味する
トルコリラの急騰に備えよう
今後、もしトレンドの変化が起こり、トルコリラ円が上昇方向に向かった場合、
おそらく最高値の半分ほど、40〜50円ほどはつけるのではないかと思います。
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