こんにちは、マスラオです。
先週1週間のドル円チャートは、月曜日にグッと下げた後に反転し、
火・水・木と連続で陽線を見せています。
金曜日終値時点で再び陰線を見せたものの、一時1ドル111.5円にタッチしました。
今後、ドル円がどこへ向かっていくのか、 見ていきましょう。
◾️円安ドル高の原因
1. FOMC議事録の公表
先週木曜の深夜、FOMCの議事録が公開されました。
FOMCとは、アメリカの金融政策を決定する会合のことで、日本で言うと「日銀金融政策決定会合」にあたります。
公開された時間自体は、8月23日(木)の3:00なのですが、
議事録に書かれている内容については、それ以前からある程度予測されていました。
今回のFOMC議事録の公表で明らかになったのは、以下の3点です。
・FF金利の誘導目標を、1.75%-2.00%に据え置く
・9月の次回会合で利上げを行う
・年内に、9月の利上げを含めてあと2回の利上げを行う
今回の議事録では、
「トランプ大統領の利下げ圧力をはねのけ、FRBとして、予定通り追加の利上げを粛々と行なっていく立場を鮮明にした」
という事実が明らかになったことが重要です。
↑ドル円の1時間足チャートです。
8月23日の3:00時点から上昇基調を加速しているのがわかりますね。
2. ジャクソンホール会議でのパウエル議長講演
議事録公表の翌日、パウエル長官がジャクソンホール会議で講演を行いました。
ジャクソンホール会議とは、毎年8月にワイオミング州ジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムで、
世界中から経済学者、政治家、中央銀行総裁などが集まります。
この会議での発言や合意が、為替や株価に大きな影響を与えることもあります。
さて、そんなジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演の要旨です。
・段階的な利上げは、景気加熱・景気減退のどちらのリスクにも対応しうる
・利上げを継続的に行うかどうかは、政治・経済・各種指標をもとに判断する
FOMCの議事録は、実際に会議が開催されてから数週間経った後に開示されるのに対し、
ジャクソンホールでのFRB議長講演は、議事録公表の直後に行われるため、
FOMCで決定された内容がそのまま踏襲されるかにも注目が集まります。
そうした観点では、今回のパウエル議長の講演は、
前日に発表された議事録の内容を擁護する形となりました。
FOMC議事録とパウエル議長講演で、利上げ路線が明確に示されたことによって
ドルが買われ、円安ドル高を引き起こしていると考えられます。
◾️利上げ路線への懸念
こうしたFRBの利上げ路線と、それに伴う円安ドル高の障害になると考えられるのは、
現状以下の二点であると考えられます。
1. トランプ大統領の利下げ圧力
トランプ大統領は、先月7月19日にロイター通信のインタビューに答え、
FRBによる利上げについて「感心しない」と批判しました。
その翌日、7月20日には、自身のTwitterで以下のように述べています。
China, the European Union and others have been manipulating their currencies and interest rates lower, while the U.S. is raising rates while the dollars gets stronger and stronger with each passing day - taking away our big competitive edge. As usual, not a level playing field...
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年7月20日
中国、EU、そしてその他の国々は、自国の通貨や金利を低くなるよう操作している。
一方で、米国は金利を引き上げており、日々ドルが上昇して大きく競争力を失っている。
....The United States should not be penalized because we are doing so well. Tightening now hurts all that we have done. The U.S. should be allowed to recapture what was lost due to illegal currency manipulation and BAD Trade Deals. Debt coming due & we are raising rates - Really?
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年7月20日
米国がうまくやっているからという理由で罰せられるべきでない。
締めつけによって我々がやってきたことは被害を被っている。
米国は不法な通貨操作と不利な貿易協定のために失ったものを取り返さねばならない。
利上げ。本気か?
トランプ大統領は、あくまで利上げに否定的な立場を貫いています。
また、先週8月20日にも、利上げについて「気に入らない」と述べ、
再びFRBを牽制していた状況でした。
↑ドル円の日足チャートです。
トランプがFRBの利上げを批判した7月19、20日に大きく下げているのがわかります。
8月20日(右から5本目のローソク足)にも同様に下げていますね。
トランプ大統領は、あくまでFRBの独立性を尊重する旨を表明していますが、
先月と先週の2回の発言によって、大きくドル高円安が進みました。
FOMCとジャクソンホールでは、パウエル議長がトランプ大統領の批判をかわした形ですが、
今後、FRBがトランプ大統領の圧力に耐え続けられるのかは注目です。
利上げを撤回したりすれば、すぐに元のドル安路線に戻るでしょう。
2. 米国が抱える貿易摩擦とトルコリスク
現在、米国が抱える大きな対外問題は以下の2つです。
いずれも解決の糸口が見えておらず、こう着状態が続きそうな気配を見せています。
・米中貿易戦争
・トルコで軟禁状態の米国人牧師問題
米中貿易戦争については、8月22日に両国間での協議が行われ、今後も段階的に対話が続けられていく見通しとなっています。
しかし、8月23日には、160億ドルにも及ぶ追加関税を発動しており、
実際の解決がいつになるかは、全く見えていない状況です。
少なくとも年内はこの問題に引っ張られるでしょう。
トルコ問題については、それ以上に何の進展も見せていません。
エルドアンとトランプという、2人の強硬派大統領が生んだ悲劇と言うべきでしょうか。
ただ、幸いと言うべきか、上記2つの問題は市場もすでに織り込み済みで、
ちょっとやそっとのニュースでは、もう為替市場もそれほど動揺しなくなっています。
FOMCでも、これらの問題について懸念の声が出たようですが、
事態の急変によって新たなリスクが顕在化しないかぎり、私は為替に与える影響は限定的と見ています。
◾️ドル円は今後どこに向かうか
結論から言うと、長期的には円高ドル安路線であるというのは変わりません。
しかし、短期的(日足レベル)には上昇する可能性があります。
ドル円は非常に馴染みのある通貨ペアである一方、難しい通貨ペアでもあるので、
私はある程度確信をもってトレンドを予測できるときしかエントリーしません。
むしろ、EUR/USDやGBP/USD、AUD/USDなどの他のドルストレートの方が、
トレンドを読みやすい傾向にあります。
その上で、今後のドル円相場を予想するならば、直近の抵抗線である
「111.5のラインを上にブレイクできるかどうか」が判断材料になりそうです。
111.5を抜けずに下に向かえば、長期的な円高ドル安路線に戻ったと言えます。
来週は、そのあたりに注目しつつ、利上げに関する要人の発言にも気を配っておきましょう。
↑ドル円日足(2015年から)。長期的には下落基調ですが……
◾️まとめ
・FRBの利上げ路線によってドルが買われ、ドル円は短期的に円安ドル高傾向にある
・ドル高が継続するか反転するかは、利上げ路線を維持できるか次第
・ドル円の直近の判断軸は、111.5のラインを超えられるかどうか