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『ファクトフルネス』を実践してみた【すぐに役立つ健全な批判的思考】

こんにちは、マスラオです。

先日、以下のツイートをしました。

 

 

ツイートにある画像は、映画『AKIRA』と『ブレードランナー』で描かれた

想像上の2019年の東京・ロサンゼルスと、実際の2019年の東京・ロサンゼルスです。

 

映画に出てくる未来の描写って暗く描かれることが多いですよね。

それは、「暗い方がよりドラマティックに感じられるから」からだということを、

『ファクトフルネス』を読んで認識しました。

 

「ドラマティック」な出来事は、時には人の精神状態に悲観的な影響を与えます。

今回は、日常にあふれている「ドラマティック」な出来事を、

明確な事実とデータを基に、「ドラマティック」ではなくすことで、

あえて、良くなっていく世界に注目してみました。

 

 

 

世界は悪くなっており、悲惨なニュースで溢れている?

ドラマティックな出来事には、真実を覆い隠すという罠があります。

普段私たちが目にしているニュースは、一見事実を伝えているようでありながら、

その実、新聞やテレビは、読む人・見る人の関心を買うために、

出来事を常にドラマティックに「飾りたてる」性質があります。

 

Yahooのヘッドラインは暗いニュースばかり

試しに、ある日のYahooニュースから、最新の国際ニュースの見出しを引用します。

 

・正男氏殺害 釈放巡り明暗の訳

・墜落同型機 日本でも運行停止

・北朝鮮当局 核放棄を否定か

・徴用工 日韓局長会談は平行線

・英EU首相 EU離脱巡り求心力低下

・米 華為採用なら「通信断つ」

・米ミサイル実験へ INF離脱で

・・・・・・

 

恣意性なく、本当にそのまま抜き出してきました。

そして、これらのヘッダーからわかることは、

 

朝鮮半島情勢は相変わらず不安定で、墜落事故は絶えず起こり、

軍縮への足取りもバラバラで、近隣国は憎み合っており、超大国は反目している。

 

ということです。

今回は、たまたまYahooニュースを選びましたが、日経でも報ステでもCNNでも、

大体ニュースの見出しは、このような深刻めいた顔をしています。

 

しかし、これらのニュースは本当に世界の実態を表しているでしょうか?

 

悪いニュースは報道されやすい

上述した記事に嘘はまったくありません。どれも実際の出来事です。

ただし、起こったことがすべてニュースにされるわけではありません。

新聞社もテレビ局も商売ですから、人々の興味を引くことのみがニュースにされます。

 

メディアや活動家は、あなたに気づいてもらうために、ドラマチックな話を伝えようとする。そして悪いニュースのほうが、良いニュースや普通のニュースよりもドラマチックになりがちだ。また、なんらかの数字が長期的には伸びていても、短期的に落ち込むことがあった場合、それを利用して「危機が迫っている」という筋書きを立てるのはたやすい。

 

・ドラマティックなニュース(=悪いニュース)は需要が高い

・ドラマティックなニュースは筋書きが立てやすく報道が楽だ

 

「実際のところ」を検証してみる

上記仮説が正しければ、実際に報道される「悪いニュース」の裏には、

それをしのぐだけの、はるかに膨大な「良いニュース」があるはずです。

ということで、上であげたYahooニュースのヘッドラインについて、

それぞれ実証的なデータで批判可能か確かめてみましょう。 

 

朝鮮半島は緊張状態から対話路線へ転換

北朝鮮と韓国の関係は、近年劇的に改善しました。

2000年以降、南北首脳会談は5回行われていますが、ここ1年で3回も行われています。

 

会談 実施年
第1回南北首脳会談 2000年6月
第2回南北首脳会談 2007年10月
第3回南北首脳会談 2018年4月
第4回南北首脳会談 2018年5月
第5回南北首脳会談 2018年9月

 

ニュースによると朝鮮半島は争いの火種のようですが、

実際には、険悪な関係の時期を乗り越え、少しずつ歩み寄りが始まっています。

ご存知のように、史上初の米朝首脳会談も2018年に開催され、

その後、2019年には早くも第2回目が開催されました。 

 

飛行機事故は減り続けている

飛行機事故への恐怖は、飛行機登場以降、人々をとらえ続けてきました。

ところが、人々の恐怖が募っていくのとは反対に、事故は減り続けているのです。

以下のグラフは、1942年以降の民間の航空機事故の死者数です。

 

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波がありながらも、1972年をピークに概ね減少傾向であることがわかります。

「墜落」のニュースがある裏で、その何百万倍もの数の飛行機が無事に飛んでいます。 

 

なお、上記グラフは、2015年までのデータが掲載されていますが、

Forbesの記事によると、2017年の死者数は59人とのことで、

民間飛行機の運行数が現在よりはるかに少なかったであろう1940年代よりも

死者数が少なくなっていることがわかります。

 

核兵器も減り続けている 

北朝鮮もアメリカも、今だに核兵器を手放しません。

私たちは核兵器廃絶への道から遠ざかっているのでしょうか。

 

以下の画像は、世界の核保有国の核兵器保有数の推移です。

表の一番左側が西暦で、下に行くほど最近のデータになります。

その横に、各国の核兵器保有数が続き、一番右の白枠部分が世界全体の保有数です。

 

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一般社団法人原子燃料政策研究会HPより(http://www.cnfc.or.jp/j/state/

 

1983年に59350発あった核弾頭は、2017年には9445発と、85%以上も削減していることがわかります。

インドやパキスタンで保有数が増加傾向にあることは留意しなければなりませんが、

それでも、世界全体の核弾頭数は年を追うごとに減っているのです。

 

日韓関係はやや良くなっている

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第6回日韓共同世論調査(http://www.genron-npo.net/world/archives/6941.html

 

相手国に対してどう思っているかを経年で比較したグラフです。

韓国に対する日本の印象は、良い印象・良くない印象ともにほぼ横ばいですが、

日本に対する韓国の印象は、良い印象・良くない印象ともに改善がみられます。

 

徴用工問題、慰安婦問題などがありながらも、

国民意識においては、それらの政治的な問題がそれほど影響しなかったと言えます。

むしろ、観光や音楽などで、民間交流はより活発になっていると予想されます。

 

米中の貿易額は過去最高に

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https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000024741.pdf

 

現在、米国の最大の貿易相手国は中国であり、中国の最大の貿易相手国も米国です。

両国の貿易量の15%以上は、お互いの輸出・輸入によって形成されています。 

トランプの一存で覆せないほどの強固な経済的結びつきが、米中間にあるのです。

 

たとえ、華為(ファーウェイ)のスマホが政府機関で採用されなくなったとしても、

製品の品質が良ければ民間市場では売れ続けるでしょうし、

売れなかったとしても代わりに売れるのは中国のスマートフォンです。

 

真実を冷静に見極めるために

今回、私は有利な見方ができるニュースを選別したのではありません。

ある日のYahooニュースのヘッドラインをそのまま持ってきて、

その一つひとつに対して、ネガティブな要素を超えるポジティブな要素を「発見」していっただけです。

 

平和なニュースはバリューがない

私が高校生の頃、学校から帰ってきてテレビを見ていると、

ちょうど夕方のニュースが始まる時刻でした。

「一体今日はどんなニュースがあったのかな?」と何となく見ていると、

トップニュースは何と「市内に大きな虹が出た」というものでした。

 

10年以上経った今でもこのことを覚えているのは、とても珍しいことだったからです。

普通、トップニュースは政治とか経済とか、もっと重くて暗い話題ですよね。

毎日空模様を一番に報じていたら、そんな番組は誰も見なくなってしまいます。

 

人は、平凡で当たり前のことよりも、ドラマティックな出来事を好みます。

だから、ニュースはいつも暗くて救いようがないことばかり報じるのです。

もし、その裏にある「平和な日常」を意識できなければ、

世界はどんどん悪くなって行くように感じてしまうかもしれません。

 

数字そのものではなく比較された数字を見る

一つひとつのニュースに対して別の見方を提示したとき、

私は、あえて経年のグラフをデータとしてお見せしました。

というのも、数字は比較によって初めて意味を持つものだからです。

 

たとえば、「青森県のりんごの収穫量が今年は1000トンだった」と言われても、

それが多いか少ないかは判断できません。

「昨年は1500トンだった」「一昨年は2000トンだった」という情報があって初めて

「青森県のりんごの収穫量は減少傾向にある」と言えるのです。

 

数字を用いて何かを説明する/されるときは、

必ずその数字がどのような意味を持つのかについて考えるようにしましょう。

単なる絶対値の提示は何の意味も持ちません。

 

ゆっくりとした変化でも変化していることを認識する

たとえば、飛行機事故による死者数のグラフに顕著ですが、

必ずしも傾向どおりに一方向に進み続けるとは限りません。

時には、足踏みしたり、反動があったりするでしょう。

それでも、数十年という長い時間軸で見れば、必ず何らかの傾向は得られるものです。

 

変化がゆっくりだからと言って、停滞していると思わずに、

ゆっくりでも着実に変化しているんだと思うようにしましょう。

 

焦りは禁物です。