こんにちは、マスラオです。
本日紹介する映画は、ダニー・ボイル監督作品『トレインスポッティング』です。
1996年の公開当時、そのスタイリッシュさから世界中で大ヒットした映画です。
ストーリー
ヘロイン中毒のレントンは、不況にあえぐスコットランド、エディンバラで
ヤク中仲間と怠惰な生活を送っていた。
人の良いスパッド、モテモテでジャンキーのシックボーイ、
ヤクを一切やらないトミー、そしてアル中で喧嘩中毒のベグビーらと
ドラッグやナンパ、軽犯罪やクラビングを繰り返す毎日。
そうこうするうちに、スパッドが受刑者となり、
レントンは何度目かのドラッグ断ちを決意。
必死の麻薬治療を受けたレントンは、ひと旗あげようと
ロンドンで仕事を見つけ、まっとうな生活を目指す。
しかし、未だ更生しないベグビーが、ロンドンまでレントンを追いかけてきた……
※Wikipediaの記載を加筆・修正
退屈な毎日を救うのはヘロインしかない
「理由はない。ヘロインだけがある」
この映画は、主人公たちの退廃的で青臭い世界観が魅力です。
まず、映画冒頭の、主人公レントンの語りにしびれます。
人生に何を望む?
出世、家族、大型テレビ、洗濯機、車、CDプレイヤー、電動カミソリ、
健康、低コレステロール、医療保険、固定金利の住宅ローン、
マイホーム、友達、レジャーウェアにレジャーバッグ、
ローンで買う高級なスーツとベスト、単なる暇つぶしの日曜大工、
ジャンクフードを食いながら見るくだらないクイズ番組、
挙句の果ては腐った身体を晒すだけの惨めな老後、
自分の分身である出来損ないのガキにも疎まれる。
それが”豊かな人生”。だが俺はゴメンだ。豊かな人生なんか興味ない。
理由か?理由はない。ヘロインだけがある。
これがイギーポップの「Lust for life」に載せて、独白されます。
本作は、無名だったユアン・マクレガーをスターダムに押し上げた作品ですが、
彼の、気だるそうかつ芯のある語り口で、のっけから映画にグッと引き込まれます。
「普通の人生」に対する反感
冒頭のレントンのセリフに込めた39歳のダニー・ボイルの心情は何だったか。
私は、「普通の人生」に対する反感だと見ます。
39歳と言えば、周りを見ると、かつて悪友だった人間たちが
人生を半ばまで生き、仕事・結婚・子育てなどを経て、
徐々に角がとれ、顔の筋肉は弛緩し、柔和な表情をたたえるようになる頃でしょう。
かつて嫌っていた「大人」になっていく人々を見て、
ボイルは何とも言えない違和感を覚えていたのではないでしょうか。
そうした「普通の人生」への反感が、冒頭のレントンのセリフに表現されます。
救いがヘロインにあるかはともかく、
「普通の人生」からの逃避を一生夢見続ける人がいるのも事実で、
その中の大半の人々は、それでも「普通の人生」を送っていかなければなりません。
時代や国を超えて共通する、夢見る青年の独白はパワーがあります。
映像美?映像「醜」?
スコットランドで最悪のトイレ
細部に渡る映像へのこだわりを見せる本作ですが、
中でも「汚い」の映像表現が群を抜いているのが、映画序盤のトイレのシーン。
レントンは、大便を漏らしそうになり、その辺にあるトイレに駆け込みます。
偶然飛び込んだそのトイレが、上の画像のトイレです。
題して、「スコットランドで最悪のトイレ」。
画像をここに載せられないくらい汚いトイレで、
続けて、劇場で気分が悪くなる人が出るほど汚いシーンが繰り広げられます。
レントンのドラッグに対する執着を示すシーンなのですが、
ぜひ実際に観て、どんなシーンか確認してみてください。
高校生美女とのワンナイト
上のシーンの口直しという意味ではないですが、
この作品随一の美しい(?)シーンが、クラブで出会った美女とのワンナイト。
実はこの美女、まだ未成年の高校生なのです。
実際に行為を行うレントンですが、目覚めた後に相手が高校生であることがわかり、
すぐに帰って、一切の連絡を断とうとします。
こんな美女にグイグイ来られたら、高校生であってもいってしまいそうですが、
レントンは謎のストイックさを見せ、拒み続けます。
未成年との淫行を断固として拒否するのは良いけど、
「その前にドラッグやめろよ!」と言いたくなること間違いなしです。
スタイリッシュなラストシーン
この映画は、以下のセリフで幕を閉じます。
Under worldの「Born Slippy」を背景に流しながら。
これを最後に足を洗って、カタギの暮らしをする。
楽しみだ、あんたと同じ人生さ。
出世、家族、大型テレビ、洗濯機、車、CDプレーヤー、健康、
低コレステロール、住宅ローン、マイホーム、おしゃれ、
スーツとベスト、日曜大工、クイズ番組、公園の散歩、会社、ゴルフ、
洗車、家族でクリスマス、年金、税金控除、平穏に暮らす。
寿命を勘定して。
そうです。
冒頭のセリフで出てきた「普通の人生」を象徴するものたちが再び出てきます。
ただし、冒頭とは使われ方が違いますね。
レントンは、これらのものを「目指すべきもの」として再定義しています。
本当にこれらのものがレントンの望むものだったのか、
レントンは、更生して「普通の人生」を歩むことができたのか。
今まさに、「普通」の価値観に悩んでいる人にオススメの映画です。
続編『T2 トレインスポッティング』も名作です。
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