誰もいなくなった町で、真実を探す物語【Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-】

こんにちは、マスラオです。

今回紹介するゲームは、2015年8月にSIEから発売されたPS4専用ダウンロードゲーム

『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』です。

 

本作を開発したのは、

『Dear Esther』などを開発したイギリスのデベロッパー「The Chinese Room」。

ストーリーを読み解くのは難しいですが、非常に儚く美しい作品です。

 

 

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イギリスの田舎町で何が起こったのか

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ゲームは、イギリスの田舎町でプレイヤー(一人称視点なので誰かはわからず)が、

車道に立っているところから始まります。

 

プレイヤーは、この田舎町を歩き回って探索していくのですが、

不思議なことに、この町には人が誰一人いません。

 

大人も、子供も、お年寄りも、数分前までそこにいたような形跡はあるのに、

町の隅々まで探しても、人間は誰もいないのです。

 

ゲームの目的は、この田舎町を探索しながら、

時々、フィールド上に浮いている「光の玉」のような人々の記憶を再生し、

この町で一体何が起こったのかを解き明かしていくことです。

 

ちなみに、人々の記憶の中にも、人の姿形はなく、声だけが再生されるので、

このゲームは最初から最後まで、(プレイヤーも含め)一人の人間も出てきません。

 

「集団失踪」という題材のワクワク感

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好奇心旺盛で想像力豊かな人にはうってつけのゲーム

私は、このようなオカルトとスリラーの間くらいの作品が大好きです。

ゲームだけでなく、実際に起こったと伝えられている事故や事件なども

想像力を掻き立てるので好きなのですが、

このゲームは、そうしたオカルトとスリラーとサスペンスとが一緒になったような

 

「早く真相を知りたい!けど、謎のままにもしておきたい」

 

という、何とも言えない気分を味わわせてくれます。

「集団失踪」というジャンルは、題材としてうってつけと言えます。

 

逆に、「最初から最後までストーリーを説明してほしい!」

と考える人には不向きな作品です。あくまで、

ゲームの中で知る事実に、自分の想像で肉付けしていくのを楽しむゲームです。

 

現実でも起こっていた集団失踪の怪

「ある村から人が全員消えた」と聞いてゲームファンが思いつくのは、

PS2で発売されたホラーゲーム『SIREN』でしょう。

『SIREN』においても、3日間で村人全員が忽然と姿を消しています。

人が消失する怪異を扱っている点では、同じジャンルと言えます。

 

実は、その『SIREN』が着想を得た現実の事件があるのをご存知でしょうか。

 

たとえば、マリー・セレスト号事件

 

1872年11月7日、アメリカの帆船マリー・セレスト号は、

船長とその妻子、船員7人を乗せ、イタリアのジェノバへと出発したが、

およそ1ヶ月後の12月5日、

無人でジブラルタル西方沖を漂流しているのを発見された。

船内は争った形跡もなく平穏無事で、湯気の立つコーヒーや朝食など、

つい数分前まで人がいたかのような状態であったが、

船長の日記には、「わが妻マリーが」との走り書きが残されていた。

 

湯気を立てるコーヒーや、「わが妻マリーが」の部分がワクワクさせますね。

また、ロアノーク植民地の集団失踪事件も有名です。

 

アメリカ、ノースカロライナ州のロアノーク島植民地。

1587年に、ジョン・ホワイトが指揮をとる遠征隊が派遣されたが、

その後、ホワイトは115名の男女を残して、本国に一時帰国した。

3年後、ホワイトがロアノーク島に戻ると、人が誰もいなくなっており、

「クロアタン」という謎のメッセージが木に刻まれていた。

 

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マリー・セレスト号事件については、

後年になって脚色された箇所が多くあるようですが、

それにしても、集団失踪がロマンを掻き立てることは間違いありません。

 

タイトルに隠された物語の意味

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タイトルを直訳すると、「みんな"Rapture"に行った」

このタイトルから、物語に与えられた意味を考察してみます。

 

ちなみに、物語の詳細や真相について深く書くつもりはありません。

というより、最後までプレイしても、人によって解釈は様々だと思うので、

ぜひ、自らプレイして何かを感じ取ってほしいと思っています。

 

"Rapture"の意味

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このゲームのタイトルには、耳慣れない"Rapture"という単語が使われています。

日常的に使う際には、単に「有頂天」や「狂喜」などの意味で使われますが、

本来、この単語はキリスト教用語として使われる単語です。

 

キリスト教終末論において、キリストの再臨の際に起きるとされる現象。

神のすべての聖徒の霊が、復活の体を与えられ、霊と体が結び合わされ、

最初のよみがえりを経験し、主と会う。

次に、地上にあるすべての真のクリスチャンが空中で主と会い、

不死の体を与えられ、体のよみがえりを経験する。(Wikipediaより)

 

タイトルにある"Rapture"は、どちらかと言うとこの意味でしょう。

わかりやすく言うと、仏教でいう「涅槃」の概念に近いのかなと思います。

物理的な肉体を捨て去り、より神に近い上位の存在として蘇ること。

死後、極楽浄土に行く感覚で、"Rapture"に至ると理解しています。

 

サブタイトルに「幸福な消失」とあることから、

町の住人たちは、何らかのきっかけで、Raptureしたのだと思います。

 

また、「プレイヤーが操作するキャラクターは誰か」という議論がありますが、

私は、プレイヤーが操るキャラクターは、

Raptureにより復活した科学者(記憶の中で登場する)ではないかと考えています。

 

Chinese Roomについて

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このゲームのデベロッパーは、先述の通り「The Chinese Room」という会社ですが、

実は、このChinese Room(中国語の部屋)という単語にも意味があります。

 

中国語の部屋とは、哲学者のジョン・サールが、

1980年に “Minds, Brains, and Programs(脳、心、プログラム)” という

論文の中で発表した思考実験。

中国語を理解できない人を小部屋に閉じ込めて、

マニュアルに従った作業をさせるという内容。

 

英字しか理解できない人を小部屋に閉じこめる(たとえば英国人)。

この小部屋には外部と紙きれのやりとりをするための小さい穴がひとつ

空いており、この穴を通して英国人に1枚の紙きれが差し入れられる。

 

そこには彼が見たこともない文字が並んでいる。

これは漢字の並びなのだが、英国人の彼にしてみれば、

それは「★△◎∇☆□」といった記号の羅列にしか見えない。

彼の仕事はこの記号の列に対して、新たな記号を書き加えてから、

紙きれを外に返すことである。

 

どういう記号の列に、どういう記号を付け加えればいいのか、

それは部屋の中にある1冊のマニュアルの中に全て書かれている。

例えば"「★△◎∇☆□」と書かれた紙片には、

「■@◎∇」と書き加えてから外に出せ"などと書かれている。

 

彼はこの作業をただひたすら繰り返す。

外から記号の羅列された紙きれを受け取り、

それに新たな記号を付け加えて外に返す。

 

すると、部屋の外にいる人間は

「この小部屋の中には中国語を理解している人がいる」と考える。

しかしながら、小部屋の中には英国人がいるだけである。

 

彼は全く漢字が読めず、作業の意味を全く理解しないまま、

ただマニュアルどおりの作業を繰り返しているだけである。

それでも部屋の外部から見ると、中国語による対話が成立している。

 

このゲームは、「中国語の部屋」に似た主題を持つのではないかと思いました。

つまり、部屋(世界)の外には、人(神)がいて、

部屋の中の人(町の人)は、意味もわからず人(神)と交信できてしまった。

 

その交信内容は、神にしかわからないが、

実は、"Rapture"に至るためのものだった……とも考えられます。

 

実際に、ゲーム中、記憶を辿っていくと、

二人の男女の科学者が何らかの大掛かりな実験を行なっていることがわかっており、

おそらく、この実験が"Rapture"への引き金となる意味を持つものと推測できます。

 

哲学的で、少し寂しい気持ちになるゲーム

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田舎はやっぱり美しい

このゲームの良さは、美麗なグラフィックで、田舎町を存分に堪能できることです。

現代イギリスの田舎を舞台にしたゲームはこのくらいしか思いつきませんが、

プレイしていて、かつて旅行したイギリスの田舎町コッツウォルズを思い出しました。

 

草木の緑と、家々の調和が美しく、穏やかな日光が差し込んで平和そのものです。

唯一、現実と異なるのは、人が誰もいないことですが、

ありのままの町の姿を見ることができるため、かえって良いかもしれません。

 

『MYST』など、探索型のゲームが好きな人には間違いなく向いています。

 

本当に誰も出てこない

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最初から最後まで、徹頭徹尾、一人の人間も出てきません。

最初に、「プレイヤーも含め」誰も出てこないと書いたのは、

"Rapture"のところで説明した通り、

プレイヤーは、すでに人間より上位の存在になり代わっているかもしれないからです。

 

田舎町と言っても、かなり広い町ですし、エリアもいくつかに分かれています。

プレイヤーの移動スピードも、現実世界と変わらないので、

「広大な空間に自分一人」という寂しさをヒシヒシと感じることができます。

そこがまた、胸を締め付けてグッとくるんですけどね……。

 

ゲームでしか味わえない感動

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夜に天を見上げると満点の星空が。

 

任天堂64の『ゼルダの伝説時のオカリナ』のCMで、

「ゲームでしか味わえない感動がある」というフレーズがありましたが、

まさしく、このゲームはその感動を味わわせてくれます。

 

ゲームは、インタラクティブなメディアのはずなのに、

こちらから働きかけるのみで、向こう(ゲーム)からのレスポンスは全然ない。

その矛盾が脳を苦しめつつ、新たな扉を開かせてくれます。

 

ゲームの新しい可能性を感じるタイトルでありながら、

5時間程度でクリアできるお手軽さも魅力です。

ダウンロード専用で、値段も2160円と安いので、ぜひプレイしてみてください。

 

公式サイトはこちら