こんにちは、マスラオです。
今回紹介するゲームは、私がSCE(現在のSIE)の入社面接を受けた際に
その魅力を熱弁したゲーム、『SIREN』。
日本を舞台にしたジャパニーズホラーを一段上のレベルに押し上げた傑作です。
ストーリー
昭和51年8月3日深夜0時、
××県三隅郡に位置する羽生田村が大規模な土砂災害により壊滅した。
27年後の昭和78年8月1日、
羽生蛇村でかつて大量虐殺が起きたという都市伝説に興味を持った
高校生・須田恭也が村を訪れたところ、
深夜の森で村人たちが怪しげな儀式を行っているのを目撃する。
姿を村人に見られ、逃げ出す最中に、
突如として村に大音量のサイレンが鳴り響いた。
これをきっかけに、村には様子のおかしな村人(屍人)たちが徘徊し、
山中にあるはずの村の周囲が赤い海で囲われてしまう。
逃避行の最中、恭也は盲目の少女・神代美耶子と出会う。
ともに行動する中、
恭也は、美耶子が数十年おきに行われる村の儀式の生贄だと知る。
彼女を救うべく、恭也は二人で村から脱出しようとするのであった。
緻密に編み込まれたシナリオ
舞台となる羽生蛇村では、様々な境遇の人物が登場する。
たまたま村にやってきた者、村に住んでいた者など、その数20名以上。
彼らのそれぞれの物語を紐解くことで、
やがてこの村の謎が徐々に解き明かされていく。(公式HPより)
未知のものに対する恐怖
『SIREN』が、他のホラーゲームと異なるのは、そのシナリオの難解さです。
考えてみれば、未知のものに対する恐怖を表現するホラージャンルにおいて、
「難解さ」は、とても相性が良いように思われます。
発売当初から考察サイトが盛り上がり、
公式で、『SIREN MANIACS』という解説本が発売されるなど、
『SIREN』の物語の全体像を解明することは、一朝一夕では困難です。
「あのシーンは、実は○○だったんじゃないか」
「あの人物とあの人物は、××ではないのか」
ゲームをプレイしながら、考察サイトを見ながら、「MANIACS」を読みながら、
真実を覆う薄皮を一枚一枚剥がしていける奥深さがあるのが、『SIREN』の魅力です。
マトリクス式の「リンクナビゲーター」
難解なシナリオを解題するキーになるのが「リンクナビゲーター」です。
『SIREN』では、プレイできるキャラクターが複数人おり、
「リンクナビゲーター」と呼ばれるメニュー画面から、
「どのキャラクターの」「何日・何時の」シナリオをプレイするか選びます。
各キャラクターのシナリオは、互いに影響しており、
あるキャラクターのシナリオをクリアしないと、
別のキャラクターのシナリオが解放されないなど、複雑に絡み合っています。
ループする世界
プレイアブルなシナリオには、「終了条件1」と「終了条件2」があり、
どちらかの終了条件を満たすことで、ステージクリアとなります。
ゲームをクリアするためには、
すべてのシナリオで終了条件1と2を満たす必要がありますが、
『SIREN』の世界では、より重要なのは終了条件2の方です。
実は、『SIREN』の世界では、時間がループしており、
終了条件1をクリアするだけでは、再びもとのループに戻ってしまいます。
ループを断ち切るためには、登場人物が特定の行動を取る必要があるのですが、
その特定の行動が、「終了条件2」なのです。
そして、「ループ」は、『SIREN』の物語を読み解く上で重要な鍵です。
シナリオをクリアしたはずなのに、画面上には「Continue to next loop...」の文字が。
キャラクターごとに、終了条件1をクリアした世界と、2をクリアした世界が存在し、
その組み合わせにより、無数の平行世界が存在することを示唆しています。
どの世界線がどこに繋がっているのか、エンディングまでプレイして、
やっと物語の全体像の一端をつかむことができます。
高すぎる難易度
クリアのためのヒントはほぼなし
『SIREN』では、「見つける」ことが終了条件になっているシナリオがあります。
たとえば、「落し物の発見」とか、「手紙の発見」とかいったものです。
シナリオを開始すると、上述の終了条件が表示された後、
まあまあの広さがあるマップを、ノーヒントで探索することになります。
物語の流れに関係する場所に落ちているならまだ良いのですが、
必ずしもそうとは限らないため、しらみつぶしに探していきます。
散々探し回った末に、「ここかよ!?」と思う場所に落ちていることがあり、
ゲームのキャッチコピーである「どうあがいても絶望」を、身をもって実感できます。
ちなみに、『SIREN2』では、あまりに難しい前作の反省からか、
シナリオが始まると「小目標」が確認できるようになっており、
小目標を順番に達成していくことでシナリオクリアに到達できるという
親切なつくりになっています。
狙撃手の精度が異常
田舎の村が舞台になっている本作ですので、
当然、猟銃をもった猟師の敵(屍人)も出てきます。
この猟師屍人なのですが、プレイヤーを発見すると、
どんな遠くからでも、どんなにわずかな隙間からでも、的確に当ててきます。
もう、スナイパーウルフばりに正確にぶち抜いてきます。
『SIREN』は、よく「死んで覚えるゲー」と言われますが、
その死の7割くらいは、猟師屍人によるものではないかと思えるくらい
ものすごいエイム性能です。
戦中を生き残った凄腕おじいちゃんということで納得するしかありません。
これは『バイオハザード』ではない
『SIREN』における戦闘は、
同じく日本発ホラーの雄として君臨する『バイオハザード』とは大きく異なります。
『バイオハザード』の場合、屈強な外国人が、協力な重火器を使い、
クリーチャーをバッタバッタとなぎ倒していきますよね。
ところが、『SIREN』では、そもそも敵との戦闘は前提とされていません。
「視界ジャック」という、敵の視界を奪うシステムによって、
敵の行動範囲を把握し、隠れながら進んでいくというのが基本になります。
『バイオハザード』では、弾薬も豊富で、敵が銃を使ってくることはありませんし、
1対1の戦いならほぼ負けることはないでしょう。
しかし、『SIREN』においては、敵は、ほぼ「人」なので、
銃も使用できますし、耐久力もそれなりに高く、1対1でも負けることがあります。
とてもリアリティがあるバランス設定だと個人的には思うのですが、
『バイオハザード』型に慣れていると、初めは戸惑うでしょう。
「日本の田舎」という異世界
独特の因習に縛られる村
ゲームをプレイしていると、「アーカイブス」という
参考資料のようなアイテムが落ちていることがあります。
これらのアイテムは、ゲームクリアにはまったく関連しませんが、
『SIREN』の世界を読み解く上では、重要な手がかりになるアイテムで、
村で昔から行われている行事や、村に伝わる伝説などについて知ることができます。
この「アーカイブス」ですが、ホラーゲームにおいて、どのような語り方をすれば、
プレイヤーに恐怖が伝わるかということの一つの答えだと思っています。
メインのシナリオでは、あえて細部には触れず、
アーカイブスに、プレイヤーの想像を盛り立て、補完するような情報を散りばめる。
これにより、鬱屈した雰囲気の村に続いてきた因習を垣間見ることができます。
廃墟マニアにはたまらない
『SIREN』では、制作チームが、日本各地の廃村や廃墟を訪ね歩き、
かつて日本に存在したであろう、リアルな昭和の日本を描いています。
モデルになった村は、有名どころでは、埼玉県の秩父の山奥の村があります。
私も以前一度訪れたことがありますが、『SIREN』に登場する家々は、
現実の廃村・廃墟のリアルなスケッチになっていると感じました。
昔ながらの日本家屋や、木造校舎などに漂う黴くさい匂いや、
床板の軋む音が聞こえてきそうな腐りかけの木材など
それまでのゲームにはなかったリアルな現実の表現が『SIREN』にはあります。
山深い田舎にまつわる都市伝説
日本では、2000年代前半に、「杉沢村伝説」など
田舎の廃村にまつわる都市伝説がブームになり、テレビで頻繁に取り上げられました。
『SIREN』の主人公・須田恭也も、都市伝説に魅せられた一人で、
「オカルトランド掲示板」というオカルト掲示板の住人です。
『SIREN』製作陣のリアリティの追求は凄まじいものがあり、
この「オカルトランド掲示板」は、実際にネット上に存在します。
2000年代前半の都市伝説ブームと、それに熱中する高校生、
アングラ的なインターネット掲示板の加熱など、
当時の時代背景を切り取ったシナリオが、ゲームとリアルの垣根を崩していきます。