今回レビューするのは、Switch用ソフト『ゼルダの伝説 夢をみる島』(以下『夢島』)。
1993年にゲームボーイで発売された同名作品のリメイクです。
- ゲーム概要
- 「わかりやすさ」に安心する
- センスを感じる「昔風」グラフィック
- リメイク版は、音楽も楽しい
- 物議を醸し出したあのストーリーは健在
- AAA大作があふれる時代に良質な2Dアドベンチャーがプレイできる幸せ
ゲーム概要
1993年に初めてゲームボーイで発売され、その後、1998年にゲームボーイカラーにカラー化されて移植された作品のフルリメイク作品です。
オリジナル版からは26年、カラー版からも21年経っており、すでにオリジナルを知る世代よりも、新たにプレイする世代の方が多いのではないかという気もします。
◼︎タイトル:ゼルダの伝説 夢をみる島
◼︎対応ハード:Nintendo Switch
◼︎ジャンル:アクションアドベンチャー
◼︎発売日:2019年9月20日
「わかりやすさ」に安心する
近年発売された「ゼルダの伝説」シリーズの中で、間違いなくゲーム史に名を刻むのは、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』(以下『BOTW』)でしょう。
数々の有名な賞レースを勝ち取り、日本国内でもゼルダ本編タイトルとして、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』以来、およそ20年ぶりのミリオンヒットとなりました。
私自身、『BOTW』を非常に楽しくプレイしました。
が、あえて不満を挙げるとするならば、圧倒的に疲れるんです。
オープンワールド特有の、「舞台は用意したから好きに遊べ!」的なスタンスは、エネルギーがみなぎっているときなら、「よっしゃー!!やってやろうやないか!」という気になるのですが、ぼーっとプレイしたい気分のときには、若干重たく感じることがあります。
しかし、『夢島』は、プレイするにあたって、頭の中でごちゃごちゃ考える必要はありません。
出された料理(ダンジョン)を、出された順に食べていけば良いのです。
ダンジョンの謎解きは頭を使うものが多いですが、「ゲーム全体をどう進めていくか」という大方針に頭を思い悩ませる必要はないので、良い意味で頭を空っぽにして楽しめるんです。
この「わかりやすさ」は、大作主義の時代の中では、とても輝いて見えます。
センスを感じる「昔風」グラフィック
Switch版の『夢島』は、アートスタイルにも特徴があります。
というよりも、ダンジョンやフィールドの構成はほとんど変わっていないので、細かい操作性の部分を除けば、このアートスタイルの部分が最大の変化点です。
基本的には、ゲームボーイ時代と同じく、見下ろし型の2Dグラフィックで描かれた世界ですが、オブジェクトはすべて粘土で作られたフィギュアのように、丸っこくツヤツヤしており、触って愛でたくなる可愛さです。
また、リンクの近くはクッキリと、画面の端はぼんやりと描写することで、プレイヤーの視線を中央にいるリンクに集中させるようになっており、カラフルな画面ですが目が疲れることがありません。
先にも述べた通り、内容面での変化がなさそうだったので、このリメイクについては買うかどうか迷っていたのですが、グラフィックを見た瞬間にハートを射抜かれました。
このグラフィックでこの世界を歩けるだけでめちゃくちゃ楽しいんです。
もう、ただ歩いてるだけで楽しい。リンクの靴音を聞きながら、草むらをわさわさしたり、砂浜をしゃりしゃりしながら歩くのがすごく楽しいんです。
こんなに歩くだけで楽しいのは、『レッドデッドリデンプション』以来です。
リメイク版は、音楽も楽しい
このゲームをプレイする中で、おそらくもっとも多く聴くことになるであろう音楽がフィールド曲です。
このフィールド曲は、「ゼルダの伝説」シリーズで同じみのあのテーマなのですが、可愛らしいグラフィックに合うように、壮大過ぎず、軽快にアレンジされています。
「ゼルダの伝説」シリーズのフィールド曲は、特に3Dゼルダのハイラル平原なんかは、壮大で勇壮な音楽が多いのですが、「ゼルダの伝説のテーマ」がフィールド曲になっているものはないんですよね。
あの音楽に合わせてフィールドを闊歩できる嬉しさも、『夢島』ならではです。
また、『夢島』においては、「歌」がストーリーを進める上で重要なファクターになってくるのですが、リメイク版では実際に歌声が収録されており、ゲームの臨場感を高めてくれます。
主旋律はゲームボーイ時代からそのままなので、とても単純な音色なのですが、だからこそ、懐かしくて、少しだけ物悲しい響きになっています。
物議を醸し出したあのストーリーは健在
『夢島』のストーリーは、ゼルダファンの間ではずっと「トラウマ」として語られてきました。
もちろん、過激なシーンがあるわけでも、びっくりさせる演出があるわけでもありません。
ゲーム中盤くらいから、徐々に、ゲームの舞台となるコホリント島が「なんだかおかしい」ことにプレイヤー自身が気づき始め、登場するキャラクターやボス敵の口からも、島の真実に関わることが話されるようになります。
最終的に、クリアを迎えたとき、島にまつわるすべての謎は解消され、リンクの冒険は終わるのですが、その終わり方はリメイク版においても「トラウマ」と呼ばれてしまいそうなドライな悲しみをたたえています。
ストーリーテリングとしては、非常に高度な手法で、プレイヤーがゲームを進める=ダンジョンをクリアして島の謎に迫っていくことが、本当に良いことなのかを考えさせる、ある意味メタ的な視点を持ったゲームです。
プレイを進めるたびに、「終わり」が意識されていく感覚は、本作ならではでしょう。
AAA大作があふれる時代に良質な2Dアドベンチャーがプレイできる幸せ
オープンワールド、高精細グラフィック、大人数ネット対戦……
面白いゲームは多々ありますが、今の時代のゲームは、作る方の物量もものすごいからプレイするのって結構疲れます。
そんなときに、Switch版『夢島』は、良質なストーリーテリングと、現代風にアレンジされた懐かしいグラフィックと音楽、そして程よい難易度の謎解きで、ゲーマーをリラックスさせてくれます。
「20年前のプレイバック」は、決して悪い意味ではありません。
久しぶりに、子供の頃に感じていた「ゲームをプレイするワクワク感」を取り戻せた気がしました。
あの頃、『夢島』をプレイしていた人も、今回初めてプレイする人も、オリジナル版が発売された時まだ生まれていなかった人も、この機会にぜひ、任天堂の往年の名作をプレイしてみてください。