今回紹介するのは、Nintendo Switch、PS4、Xbox Oneのマルチ機種で展開される新感覚のアドベンチャーゲーム『ヘッドライナー:ノヴィニュース』です。
ゲーム概要
◾︎タイトル:ヘッドライナー:ノヴィニュース
◾︎対応ハード:Nintendo Switch、PS4、Xbox One
◾︎ジャンル:短編アドベンチャー
◾︎発売日:2019年12月12日
◾︎価格:1600円(ダウンロード版、税込)、3980円(パッケージ版、税別)
◾︎開発元:Unbound Creations
パッケージ版の価格がダウンロード版と比べて高く設定されていますが、Switch・PS4のパッケージ版には、ゲーム中で使用されている全35曲のサウンドトラックを、スマートフォン・タブレットおよびPCにダウンロードして聴けるSONOCAカードが付属しています。
『ヘッドライナー:ノヴィニュース』は繰り返しプレイできる短編アドベンチャーゲームです。プレイヤーは架空の国『ノヴィスタン』で発行される新聞社『ノヴィニュース』の編集長を務め、ノヴィスタン国民の世論をつくりあげていきます。
プレイヤーのデスクに日々送られてくる様々なニュース記事をチェックしてみましょう。デスクの両側にはそ2つのスタンプが用意されています。採用なら緑、不採用なら赤のスタンプを押して新聞の見出しを飾る記事を選別していきます。
[中略]
理想的なノヴィスタンの将来像に正解はありません。繰り返しプレイを続け、好みによってキャラクターの性別や外見などを変更を楽しみ、様々な結末を迎える14日後のノヴィスタンを見届けてください。
(公式HPより)
今まで体験したことのない職種、すなわち「新聞紙の編集長」が主人公の本作は、毎日編集員が執筆する記事を、編集長であるあなたが「承認」または「却下」することで、自分が「正しい」と考える方向へ世論を導いていきます。
扱う記事は常に複雑なものなので、承認・却下の選択は簡単なものではなく、自分が正しいと思う選択をしていったとしても、思い描く未来に到達できるかはわかりません。
頭をフル回転させながらプレイするゲームです。
ゲームの流れ
本作は、ゲームの期間が「2週間(14日間)」と明確に区切られています。
この短い期間の中で、自分の信じる理念を紙面上に落とし込み、目指すべき方向へと大衆を導いていかなければなりません。
本作は、周回プレイを前提として設計されており、2周目以降は1周目で納得のいく結果が得られなかったり、別の結末も見たくなったりした場合に、1周目の内容を若干引き継いでプレイすることが可能です。
1. 出社して記事を選択
出社すると、ボスから「今日は◯個の記事を採用するように」というお達しが出ます。
ちなみに、2日目以降は、前日までの「働きぶり」を評価されて、記事選定の方向性に対して指示が出たり、給与に変動があったりします。
主人公は、記者が執筆した記事を確認し、「承認」と「却下」に振り分けていきます。
承認しなければならない本数は、日によっては決められていることもありますが、大体の場合、「すべて承認」または「すべて却下」という方法も取ることができます。
そのため、出来上がった新聞が何を主張したいのかわからない曖昧な紙面になるのか、社として一貫した方針を示すことになるかは、あなたの記事選定が大きく影響します。
2. 街を散策して家に帰る
記事の選定が済んだら、今日の仕事は終わりです。
新聞社を後にして、自宅に帰りましょう。
自宅に帰るまでの道中では、その日の「ノヴィニュース」が世論に与えた影響を、街の様子から確認することができます。
たとえば、遺伝子改良されたアルコール飲料の危険性を訴える記事を承認したなら、そのアルコール飲料を販売する商店が糾弾を受けていたり、あるいは、現政権に批判的な立場を取る記事を承認したら、大統領のデモが反対派のヤジばかりになったりします。
街中では、職場の同僚や主人公の兄、ホームレスなど様々な人物と出会います。
彼らとの会話は、選択式で進んでいきますが、これらの選択によっても、ゲームのストーリーは大きく変わっていきます。
3. 次の日の仕事に備えて休む
家に帰ったら、ラジオを聞いたり、犬と遊んだりして休みましょう。
自宅の窓から見える看板も、世論によって日毎に変化していきます。
ゲームの基本的な構造は、上記の通り、「出社→記事選定→帰路→自宅」のルーティンですが、2週間という短い期間で終了するため、毎日何かしらの事件が起こります。
それぞれの出来事に対して、どういった態度を取るかによって、物語の行く末は大きく変わっていきます。
扱うテーマは身近で難しい
「ノヴィニュース」で取り上げるニュースは、たとえば以下のようなものです。
・隣国レアリスの遺伝子組み替え技術の規制
・国民皆保険の導入
・他文化・他国民に対するヘイトスピーチ
・反政権言説の国家権力による統制
上記を見ても分かるとおり、扱うニュースは、変に抽象化されていないというか、現実で実際に起こっている問題ばかりです。
また、このゲームの世界では、決められた正解やクリア方法が存在しません。
現実世界と同様に、本作では単純な正義が通用しないのです。
たとえば、国民皆保険の導入に賛成する記事を多く承認し、国民皆保険導入に賛成的な世論を作り出して、結果的に法案が採決されたとしても、誰もが良い医療を受けられる社会が到来するわけではありません。
病院の利用率が急上昇し、かえって、必要な人に必要な医療が行き渡らなかったりもするのです。
何かを達成するためには、別の何かを捨てなければならないということを改めて認識させてくれるゲームです。
1周2時間でサクッとプレイできる
本作の良い点は、ボリュームが重たすぎず、サクッとプレイできるところです。
初回プレイは、クリアまでに大体2時間程度かかると思いますが、システムに慣れた2周目以降は1〜1.5時間程度でクリアできると思います。
周回を前提としたゲームなので、何度もプレイして、自分の納得の行く結末を探すことをオススメします。
1周目でチラッと登場したキャラクターが2周目以降で「新キャラクター」として登場することがあり、街で話すことのできるノヴィスタン国民は次第に増えていきます。
テキストやストーリー展開も1周目とは異なるため、飽きずにプレイできます。
キャッチーな絵柄だが、話は重い
扱うテーマがテーマだけに、シリアスな展開が多いゲームです。
自殺者が出たり、登場人物が殺されたり、収容所送りになったりする場合もあります。
出てくるキャラクターは、主人公の周りの人物だけ、会話シーンの立ち絵が用意されていますが、それ以外の「大衆」については、トゥーン調の粗いグラフィックのみで、表情まで判別することができません。
新聞紙の編集長である主人公に対して、「大衆」が何かを語りかけてくることはたまにありますが、基本的には、紙面の内容を反映して行動を取るだけです。
顔の見えない「大衆」が取る行動は、時にプレイヤーであるあなたの思惑を超えて、突飛で残酷なものとなります。
情報の取捨選択の重要性や、誠実であるとはどういうことか、など色々と考えさせられる、かなり深いゲームでした。