今回紹介するゲームは、Nintendo SwitchとSteamでダウンロード販売されている『Ape Out』というゲームです。
その名のとおり、「Ape(ゴリラ)」が「Out(脱走)」するシンプルなゲームであり、小規模な開発体制で作られた、アーティスティックなインディーゲームです。
ゲーム概要
◾︎タイトル:Ape Out
◾︎対応ハード:Nintendo Switch、PC
◾︎ジャンル:ベルトスクロールアクション
◾︎発売日:2019年2月28日
◾︎価格:1500円(Nintendo Switch版、税込)
◾︎開発元:Gabe Cuzzillo(個人)
本作は、檻から脱走したゴリラが、研究所やビルなどの施設で人間を殺しながら、ジャングルへの帰還を目指して進んでいくというベルトスクロールアクションゲームです。
アメリカのゲーム開発者ゲイブ・クジーロさんを中心とした少人数作成のインディーゲームですが、シンプルなゲームシステムから生まれる爽快感と、音楽とアクションを組み合わせた演出、独創的なアートデザインが、発売当初から世界で評価されています。
とにかくグチャグチャにする爽快感
ゲームは、一頭のゴリラが檻に囚われているところから始まります。
ジャングルの奥地から、実験用に使う個体として連れてこられたのでしょう。
周りの檻にいるゴリラは血にまみれており、既に死んでいることがわかります。
「ZR」ボタンを押して、檻の扉と檻の前にいる人間をぶっ飛ばしたら脱走開始。
「APE OUT」という巨大なタイトルロゴが出て、音楽が流れ始めます。
ここから、人間を倒しながら出口へ向かって進んでいくことになります。
「人間を倒しながら」と簡単に書きましたが、特徴的なのはこの倒し方の描写。
ゴリラに突き飛ばされた人間は、壁にぶち当たると手足がもげ、血がドッと出て、動かなくなります。これこそ、このゲームにおける「人間を倒す」の表現なのです。気絶させるとか生半可な表現は使いません。
フォトリアルなグラフィックだったら、『バイオハザード7』顔負けのグロテスクなゲームになっていたでしょう。
ただ、残酷なはずの「人を倒す」行為が何とも爽快なんです。
ひたすら人間を惨殺して進むだけなのに、気持ちよくてアドレナリン出まくりです。
これは、倒し方の容赦のなさと、後述する音楽によるところが大きいでしょう。
「このグラフィックだから」、「殺すのはゴリラだから」等、グロテスクなゲームなのに自主規制が入らなかった理由はあるとは思いますが、「これだけ殺すことの楽しみ(?)を教えてくれてありがとう」と言いたくなるゲームです。
音楽はゴリラと人間のセッション
本作のBGMは、ほぼドラムのみです。
形式としては、映画『バードマン』のオープニングに近く、後ろでかっこいいドラムのテンポが刻まれていて、それと一緒にキャラクター(ゴリラ)が動いていく感じです。
面白いのは、人間を殺した瞬間だけ、ドラムラインに「シンバル」が入ること。
人間が壁に叩きつけられた瞬間に「シャーン!」というシンバルの音がなり、それが、ベースとなっているドラムラインを彩る良いアクセントになっています。
イメージで言うと、ジャズのセッションをしている感じでしょうか。
どんなタイミングで人間を殺しても、必ず良い感じでシンバルが入るので、敵を殺しているのではなく、音楽を奏でている気分にもなれるので、次第に気分がノッてきます。
レコードを聴くように、アーティスティックなステージをたどっていく
『Ape Out』は、全4ステージからなっており、1ステージは、「一つのレコード」という体裁を取っています。
1ステージの前半と後半は「A side」と「B side」という風に分かれており、A sideからB sideに進むときには小休止が挟まります。
そして、ステージをクリアすると、「The end of Disc ◯」のような形で、ディスクをすべて再生したことを伝えるメッセージが表示され、次のレコード(ステージ)が追加されます。
本作は、非常にグラフィックにこだわったゲームです。
画面は、単色から構成されるとてもシンプルなグラフィックですが、必要最低限に抑えられた色味と、ゴリラ・人間双方の血の表現は、ゲームを楽しむには十分です。
登場するオブジェクトや人間も様々で、たとえば、研究所だったら、無機的な装置やPCが並んでいたり、配管がむき出しになっていたりしますが、高層ビルからの脱出の場合は、各階に武器を持たない一般人も発見することができます。
一点突破だけではない頭脳プレイもできる
とにかく敵を倒すのが楽しいこのゲームですが、脳筋プレイだけしていれば良いだけではなく、敵が多い場所ではそれなりに頭を使う必要もあります。
ゴリラは無敵ではないので、敵のショットガンを数発受けると死んでしまいます。
そのため、たとえば敵が密集している箇所では、障害物をうまく利用しながら後ろに回り込んで、殺さずに通り過ぎたり、あるいは、敵の一人を掴んで、銃を乱射させ、目の前にいる人間を殺したりする方法で進んでいくこともできます。
力押し一辺倒であれば、ゲーム性の部分でかなり早く飽きがきてしまうと思うのですが、本作では、絶妙なレベルデザインによって、力で突破する部分と頭を使ってプレイする部分の住み分けがうまいことできています。