香川県議会で審議されている「ゲーム禁止条例」が、Twitterで話題を呼んでいます。
正直、「またこの手の話題か」と、こうしたニュースを見るたびに思うのですが、今回も例に漏れず、インターネット上では、条例の内容が袋叩きにあっているようです。
ゲーム禁止条例の内容
報道によると、香川県議会では、ゲームやネットの依存症対策として、高校生以下のゲームプレイ時間を規制する具体的な条例の素案について審議しているとのことです。
◾︎素案の内容
・対象は高校生以下の子供
・ゲーム時間を平日60分、休日90分以下に制限
・高校生以下は22時以降、小学生以下は21時以降ゲーム禁止
違反した場合の罰則はないということですが、常軌を逸した条例内容に対し、ネット上では「意味がわからない」、「県がゲームのプレイ時間を規制する必要はない」など、反対の声が圧倒的多数を占めています。
これはひどい。ゲームの時間を制限したからって勉強に向くわけじゃないし、そもそもゲーム自体は悪じゃない。楽しく計算力・論理的思考力・戦略性を鍛えるツールにもなる。
— 松丸 亮吾 (@ryogomatsumaru) January 10, 2020
ゲームと子供の距離は、親子がコミュニケーションをして上手にシステム化するものだよ。#ゲーム禁止https://t.co/6Eu1FkPufg
特に罰則規定など無いらしいが、親が子供のゲーム時間を規制するのに、『法律で決まってるんだよ!』って言えば話聞いてもらえるかも!って事? それでいけたら苦労は無いよ😭#ゲーム禁止
— 白石 稔 (@minorunba69) January 10, 2020
県条例素案にゲーム利用時間制限|NHK 香川県のニュース https://t.co/PJb9Gmuae3
社会に出てゲーム浸りの人はゲーム禁止の家庭生まれ。
— mark@神撃のキノコ (@mark19_gbf) January 10, 2020
エリートアニオタの人はテレビ禁止の家庭生まれ。
漫画博士の人は漫画禁止の家庭生まれ。
今まで出会ってきた人の中に上記のような人が結構いるんですよねぇ…禁止はただただ免疫力を失うだけでとてもよくない気がする。
なぜ香川県なのか?
香川県議会では、2019年11月の定例会においても、「eスポーツの活性化に対して慎重な取組みを求める意見書」が採択されています。
世界各国で盛り上がりを見せているeスポーツは、民間企業の調査によると、その市場規模が平成30年時点で900億円とも言われており、今後も高い成長が見込まれている。
[中略]
しかしながら、ゲームやインターネットの過剰な使用は、依存症につながることや、睡眠障害、ひきこもりといった二次的な問題まで引き起こすことなどが指摘されており、選手間の競争心を煽るeスポーツの過熱化は、これらの症状をより一層助長することが懸念されている。また、ネット・ゲーム依存症については、世界保健機関が平成30年6月に公表した改訂版国際疾病分類において、「ゲーム障害」という疾患として認定し、今年5月の総会において正式に「病気」として決定されたところである。
[中略]
よって、国においては、子どもや若者の心身の発達に悪影響を及ぼす可能性のあるネット・ゲーム依存について、必要な対策を早急に講じるとともに、eスポーツの活性化が、ネット・ゲーム依存の増加につながることのないように慎重に取り組むよう強く要望する。
意見書を要約すると、「eスポーツ市場は急成長してるけど、ゲームをやりすぎると心身に悪影響があるから、国はeスポーツにあまり力を入れすぎるなよ」ということです。
この意見書自体は、ゲーム規制に関する具体的な文言はなく、ほぼ何も言っていないに等しいのですが、こうした意見書を採択してしまう土壌が香川県議会にはあるということです。
eスポーツと市場を奪い合う他産業の横槍とも思えないので、おそらく県議会に猛烈なゲーム嫌いの議員がおり、その議員がある程度権力を持っているというところではないでしょうか。
ゲーム禁止条例の何が問題か?
ゲーム禁止条例の問題点は3つあります。
1. 公権力による家庭教育への介入
2. 「ゲーム依存」の実態無視
3. 成長産業の発展の阻害
一つずつ見ていきましょう。
1. 公権力による家庭教育への介入
学校教育は、行政によって学校で教師が行うものですが、家庭教育は、本来、親が責任を持って家庭で行うものです。
「ゲームは1日◯時間」等のルールを決めたいのであれば、それは家庭内でルールを作れば良い話であり、公権力が一般家庭の領域に踏み込んでルールを作ろうとするのは越権行為です。
これでは、香川県議会は、「親が子供を教育できない」と言っているのと同然です。
2. 「ゲーム依存」の実態無視
この条例は、「ゲーム依存症」の対策として発議されたようですが、そもそもゲーム依存症とは何なのでしょうか。
たしかに、WHOにより、「ゲーム障害」が疾病として認定されたのは事実ですが、障害の実態は「依存」そのものであり、アルコールやタバコのように、身体の健康を害するものではありませんし、単純にゲーム時間の規制を行っても依存症の人からは反発を招くだけです。
「ゲーム脳」というトンデモ論がかつて日本で流行りましたが、悪影響が立証されていないにもかかわらず、学力低下の戦犯探しや、子供は外で遊ぶのが健全と考えている一部の勢力によって、ゲームがスケープゴートにされるという現象は今に始まったことではありません。
規制するにしても、依存症対策として有効だと考えられる具体的な数値を規制の根拠として確定させてからが筋でしょう。
3. 成長産業の発展の阻害
上に引用した意見書自体にも書かれている通り、eスポーツは、近年世界的に興隆目覚ましい一大成長産業であり、ゲーム業界において一日の長がある日本ならびに日本企業にとっては願ってもないチャンスです。
将来eスポーツの選手になるような子供や、eスポーツ投資を行う企業が、香川県の条例によって影響を受けることはまずないと思いますが、こうした盛り上がりに冷や水をかけるような条例が全国の議会に波及していく可能性はゼロではありません。
悪しき前例とならないためにも、香川県の条例は絶対に採択させてはならないものだと思います。
条例は百害あって一利なし
上記の通り、「ゲーム禁止条例」は、罰則がないとは言え、行政の個人に対する越権行為とみなされても文句は言えず、さらに禁止する時間や年齢に具体的根拠がないこと、ゲームによる悪影響が明示されていないことなどから、悪法ならぬ悪条例と言わざるを得なくなっています。
今回、Twitterでトレンド化し、条例案が多くの人の目にさらされることになりましたが、ネット時代特有の一般人の行政監視機能によって、こうした悪条例が葬り去られることを願いましょう。