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珍しい台湾産ホラーゲーム『返校 - Detention』

今回紹介するゲームは、台湾のゲームスタジオ「Red Candle Games」によって制作されたホラーゲーム『返校 - Detention』です。

 

普段、コンシューマーゲームをプレイしていると、自然と、日本・アメリカ・ヨーロッパの三地域で開発されたゲームをプレイしがちになり、その他の地域のゲームについて疎くなるのですが、本作がNintendo Switchで販売されていることを知りプレイしてみたところ、めちゃくちゃ楽しめました。

 

 

ゲーム概要

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◾︎タイトル:返校 - Detention

◾︎対応ハード:PC(Steam)、Switch

◾︎ジャンル:ホラーアドベンチャー

◾︎発売日:2017年10月27日(PC)、2018年3月1日(Switch)

◾︎開発元:Red Candle Games

 

開発元であるRed Candle Gamesは、台湾のゲームデザイナーたちが結集して作られたゲームスタジオであり、本作を皮切りに、複数のホラーゲームを発表しています。

 

台湾土着の風俗や宗教にスポットライトを当てた世界観作りが得意で、日本や西洋のホラーとは一味違う、じめっとした湿度の高い恐怖を感じさせてくれます。

 

『返校』は、発売後、Steamの売上ランキングで世界3位になり、PlayStation4版や、Nintendo Switch版が発表されるなど、台湾産のゲームとしては異例のヒットを記録しました。

 

映画化も発表されており、実際にあった歴史上の出来事を背景にしていることから、台湾政府としても積極的に支援していくと述べられています。

 

ストーリー

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物語の舞台は、1960年代の台湾です。

 

太平洋戦争終結後、1947年に起こった二・二八事件(台湾本省人による国民党政府への反対デモ)をきっかけに、台湾では戒厳令が敷かれることになります。

 

1987年に戒厳令が解除されるまで続いた国民党政府による反体制勢力への弾圧を「白色テロ」と呼びますが、この期間に、多くの台湾人が、政府からの弾圧によって処刑されたり、国外逃亡を謀ったりしました。

 

『返校』では、そうした戒厳令下の台湾で、白色テロの犠牲になった人々を描きます。

 

深い山の中にひっそりと建つ翠華高校。

そこで学生が二人、閉じ込められていることに気がつく。

かつての学び舎は悪夢のような場所へと変貌し、冥府の存在が跋扈していた。

脱出のために、今は謎めく存在となった学校を探索し、謎を解かなければならない。

 

この息をつかせぬ恐怖が襲う環境でどう生き延びるのか。無事に戻れるのだろうか?

(*Steamの商品紹介ページより)

 

『返校』では、白色テロそのものについて詳細に説明されるわけではありませんが、歴史的な事実を下敷きにすることで、単なるホラーゲームではなく、やるせなさと悲哀と感動を感じさせてくれる作品となっています。

 

皮膚で感じる台湾の湿り気

台湾をはじめ、現在の東南アジアは大分都市化が進んでいますが、大都市の中でも一本裏路地に入ると、そこには、なんとも言い難いアジア独特の空気が淀んでいます。

 

本作では、舞台が1960年代の台湾ということもあり、そこかしこに、異国情緒を感じさせるようなオブジェクトがあったり、伝統的な台湾を感じさせるようなアートワークになっています。

 

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ゲーム中、しばしば登場する「祭壇」。お祈りを捧げることでセーブできる

 

かつて、ジャパニーズホラーが世界でブームになりましたが、きっと西洋世界の人々が、ジャパニーズホラーをプレイするときにも、我々が『返校』をプレイするときに感じるのと同じような気味の悪さであったり、ゾワっとする感じを味わったりするのだと思います。

 

人間がいて、建物があって、話されている言葉も理解できる。

 

だけど、そこかしこに、怪しげな祭壇があったり、よくわからないお札が貼ってあったり、食卓には見たこともない料理が並んでいたり、ホラーにとって一番大事な「ちょっとした違和感」が散りばめられているのが本作です。

 

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台湾の一般家庭はこんな感じだったのだろうか。どことなく、懐かしさも感じます

 

プレイヤーをびっくりさせるような安っぽい演出は、ゲーム全体を通してほとんどありませんが、じわじわと恐怖が皮膚を侵食していくような感覚が味わえます。

 

真実に近づいていくうちに切ない気持ちになる

純粋な恐怖のみを描くホラーもあれば、製作者のメッセージを伝えるためにホラーを舞台装置として借りた作品もあります。

 

本作は、どちらかというと後者の作品で、単純に怖いだけのシーンが最後まで続くわけではありません。

 

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最初は、「なぜ自分がここにいるのか?」「なぜ校舎に閉じ込められているのか?」もわからない主人公=プレイヤーですが、ゲームを進めていくうちに、徐々に、自分に何が起こったのか、今何が起きているのかがわかっていきます。

 

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校舎は広く、だんだん新しい場所に行けるようになるので飽きません

 

ストーリーの中でも重要な要素は、登場人物によって言葉で語られるだけでなく、ゲーム上の演出として、ふいに画面に現れたりもしますが、真実の表皮が剥がされていく一瞬一瞬、意味を理解した瞬間に鳥肌が立つほどの感動を覚えます。

 

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、私がもっとも感動したのは、ゲーム終盤、主人公がある場所に行ったときに描かれる演出です。

 

ぜひ、プレイしてチェックしてみてください。

 

レベルデザインもちょうど良い

ホラーゲームで重要な要素の一つは、レベルデザインだと思います。

 

『SIREN』のように、難度を上げることで恐怖を演出するのか、『バイオハザード』のようにアクションに重きを置いてストーリー進行を重視するのか。

 

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『返校』は、どちらかといえば、ストーリー重視型です。

 

アイテムを使用するポイントを探ったり、簡単な謎解きはあるものの、ゲームの進行を阻害するほど難しいものではなく、単純に考えていけば、詰まるところなく進めていけると思います。

 

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謎解きのアイテムも怖い……

 

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ゲーム中に入手できるメモや資料も謎を解くヒントになります

 

一つだけ、「このアイテムここで使うの!?」と驚く箇所があるのですが、そこも演出のうちですね。鳥肌ポイントの一つです。

 

まとめ

ホラーゲーム好きには文句なくオススメできるタイトルですが、それだけでなく、歴史好きや、アドベンチャーゲーム好きな方にも、プレイしてほしいタイトルです。

 

クリア時間は、概ね5時間程度を見込んでおけば良いでしょう。

 

開発元のRed Candle Gamesは、『返校』の次の作品となった『還願』の一部内容で炎上し、『還願』は、現在販売停止に追い込まれてしまっています。

 

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炎上内容から考えて、『返校』が同様に販売停止になるとは思えませんが、素晴らしいゲームであることは間違い無いので、プレイできるうちにプレイしておくといいかもしれませんね、と、『還願』をプレイできなかった私からアドバイスしておきます。