今回取り上げるゲームは、1991年に「Amiga」で発売されたアクションアドベンチャーゲーム『アウターワールド』。
聞き覚えのない方もいるかもしれませんが、「Amiga」とは、アメリカのコンピュータ会社コモドールによって1985年に発売され、80年代後半から90年代初頭にかけて、ヨーロッパで人気を博したPCです。
『アウターワールド』自体は、Amigaで発売された後、PS4やSwitchも含め様々な機種で発売されていますが、当初は、マイナーな機種のみでの発売でした。
ところが、現在では、ゲームに詳しい人なら知らない人はいないというくらい有名なゲームになりました。一体、なぜ、『アウターワールド』は、ここまで有名になったのでしょうか。
ゲーム概要
◾︎タイトル:アウターワールド
◾︎対応ハード:Amiga500(後にSFC、iOS、Android、PS4、Switch等に移植)
◾︎ジャンル:アクションアドベンチャー
◾︎発売日:1991年(オリジナル版)
◾︎開発元:デルフィン・ソフトウェア
本作は、フランスのゲームメーカー「デルフィン・ソフトウェア」の社員であったゲームデザイナー、エリック・シャイ氏が、ほとんど一人だけで作り上げたゲームです。
北米では、『Out of This World』、欧州では、『Another World』というタイトルで発売されており、2Dポリゴンで描かれたグラフィックと、SF的な世界観がハマり、コアなファンを多く獲得しています。
日本国内においては、当初スーパーファミコン版と3DO版が発売されており、その後20年以上の時を経て再評価が進んだ結果、iOSやAndroidなどのOSや、3DSやNintendo Switchといった最新ハードに移植されるようになりました。
一般のゲーマーだけでなく、ゲーム製作者らに高い評価を受けており、「ゲーム製作者が影響を受けたゲーム」として名前が挙げられることが多いゲームでもあります。
ストーリー
『アウターワールド』のストーリーは、あってないようなものです。
ゲーム序盤のカットシーン(台詞なし)以外は、ほとんどプレイシーンが続き、プレイ中に表現される景色や、主人公、敵の挙動などから、なんとなくストーリーを思い描いていく必要があります。
科学者のレスター・ナイト・チェイキンは、度重なる嵐の影響で延期されていた粒子加速実験を天候の悪い中強行する。
延期中に確認しておいた訂正すべき場所をコンピュータに打ち直し、あとは実験の結果を待つだけだった。
しかし、その最中雷が研究所を直撃。そして、レスターはそれによって引き起こされた光と爆発に巻き込まれた。直後、レスターはその場所から消え去った。
その後、フランスのある研究所から彼が記したと思われる1冊の日記が見つかった。
(*Wikipediaより)
こうして、ストーリーを書き出してみると、ものすごくワクワクして好奇心を掻き立てられるのですが、上述のストーリーすら、ゲーム中に正確に把握することは、ほぼ不可能です。
断片的な情報から、自らの頭の中でストーリーを紡いでいかなければならないのが本作の特徴です。
小島秀夫に影響を与えた世界観
数々のゲームデザイナーに影響を与える
「メタルギア」シリーズや、『デス・ストランディング』の小島秀夫監督は、自身に影響を与えたゲームのうちの1本として本作を挙げています。
僕に影響を与えたゲームはこの4本。「ゼビウス」「スーパーマリオ」「ポートピア殺人事件」「アウターワールド」。「アウターワールド」の現行機版が出る?らしい。
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) June 19, 2014
また、『シルバー事件』や『ノーモアヒーローズ』の須田剛一氏も、大好きなタイトルとして本作を挙げています。
他にも、『ICO』や『ワンダと巨像』の上田文人氏が、「『ICO』を制作する上で大きく影響を受けた」と発言するなど、作家性の強いゲームを作るゲームデザイナーにとっての、いわばバイブルのようなゲームになっています。
稀代のゲーム作家として知られる3人を、ここまで惹きつけるものは一体何なのでしょうか。
オリジナル版はスーパーファミコンの円熟期に発売された
ここで、本作のオリジナル版が発売された1991年に発売されたゲームを振り返ってみましょう。
・ファイナルファンタジーⅣ
・ストリートファイターⅡ
・ソニック・ザ・ヘッジホッグ
・ゼルダの伝説 神々のトライフォース
どれも今でも人気のあるシリーズですよね。
当時は、スーパーファミコンが一斉を風靡していた時期で、どのメーカーも消費者受けするわかりやすい大作や、刺激的な意欲作を発売していた時期でした。
特に、ファミコン時代からシリーズを作り上げてきた「ファイナルファンタジー」や「スーパーマリオ」、「ゼルダの伝説」は、進化したSFCのマシンパワーをフルに活かして、ゲームとして、一つの到達点を見せるようになります。
ところが、そんな中発売された『アウターワールド』は、上に挙げたようなタイトルとは質的に異なります。
ストーリーはよくわからないし、なんだか知らないけど難易度もめちゃくちゃ高くてとにかく死にまくる。その割に、クリアするまでのボリュームはそんなに多くないという、個人制作のゲームあるあるが詰まったタイトルでした。
ゲームが、「わかりやすく」、「親切に」なっていく中、時代と逆行するようなタイトルだったのです。
衝撃的だった世界観
私は、『アウターワールド』がここまで影響を与えるに至った理由は、端的に言うと、ゲームの「背景」にあると考えます。
RPGや一般的な2Dスクロールアクションは、ゲーム中同じ場所に何度も戻ってきたり、開発時にはかなり長いコースを何本も作らなければならなかったりします。
そのため、開発リソースを考えると、一つのエリアやステージを作り込むことはできず、背景のアセットは使い回しになりがちです。
『アウターワールド』は、前に進んでいくことでストーリーが進んでいきますが、未知の惑星を表現するために用意された背景のアセットは、バリエーションに富むもので、その一つひとつは、PCの壁紙にしたくなるほど美しいです。
色調の抑えられた美しい背景は、ゲームの世界観にどっぷり浸かりこむのに十分な役割を果たしており、可愛らしいグラフィックが多かった当時のゲームの中で、骨太なSFの世界観を示した本作の衝撃は凄まじかったでしょう。
『デス・ストランディング』も「世界を見せてくれる」作品だと思いますが、30年前の『アウターワールド』は、すでにそれをやっていたのです。
エリックシャイの世界は広がり続ける
『アウターワールド』の製作者エリックシャイ氏は、1991年に本作をリリース以降、定期的に新作を発表しています。
2011年には、Ubisoftから、「シムシティ」や「トロピコ」といったゲームに代表される「ゴッドゲーム」ジャンルのタイトルとして『From Dust』を発売しました。
また、2020年には、PS VR向けに、『PAPER BEAST』を発売予定です。
このゲームにおいても、『アウターワールド』のように、一つの世界を探訪する楽しさを追求していることが、画面映像から見ることができます。
※画像出典
Nintendo Switch|ダウンロード購入|Another World
Paper Beast Game | PS4 - PlayStation